朝・・・天気がいい〜!!6日目にしてやっとすがすがしい朝!朝食後すぐ出発できるように荷物をまとめ、まだ時間が早いので外に出る。ここコネマラ地方は国立公園もある自然豊かな所。昨日は曇ってよく見えなかった緑濃い山々が素晴しい。今回の旅行では回れないけど、これも次回のお楽しみ。
旅行中は朝から結構食べるのに慣れていたが、今日は格別ボリューム満点。アラン諸島へは10時半の船に乗るが、出発はここから60キロ離れたロッサヴィール。しかも、これを逃すと1時まで便がないので、余裕を持って8時40分には部屋を出る。下に清算に行くと、ご夫婦は朝食の世話でキッチンに。ちょうどお嬢ちゃんがいたので、呼んでもらう。旦那さんが出てきて清算をしてくれるが、“アラン諸島に行くんだって?メインのイニシュモア島は観光地になりすぎてイマイチ。イニシュマーン島が素朴で断然素敵だよ!”とアドバイスしてくれる。とにかく、このB&Bは素晴しい!
道中・・・おじさんの言葉が頭に残り、イニシュマーン島にも行ってみたくなった。ロッサヴィールからは同じ時刻に便がある。問題は、島間の移動をどうするか。私の旅行必須アイテム・地球の歩き方には、「夏季は島同士を結ぶフェリーが出ており、ほかの島へ楽に移動できる」とある。よっしゃ、これなら行ける!狭い道が多くギリギリ10時20分へ港へ着く。しかも、ロッサヴィールという表示はなく、船の絵を頼りにやっとたどり着いた。チケット売り場で、念の為に島間のフェリーについて聞いてみると、私達が乗るアイルランド・フェリーズではなく、違う会社が運行してるとの事。ではイニシュマーン島にまず行って、着いたら港でイニシュモア島行きの便を確認したらいいか!と、船に乗り込む。
30分ほどすると、アラン3島が見えてくる。同時出発した大きな船は、メインのイニシュモア島へ。おじさんの言葉を繰り返し思い出しながら、“私らの方が絶対素敵〜”と何故か鼻高々の私達。そう、港に着くまでは・・・。港に着き、私達を含め20人にも満たない人が下船。・・・シ〜ン・・・何にもない!私達の予想では、小さいにせよ船の事務所やチケット販売所があるはずだった。他の人々は、おそらくここに滞在するのか、お迎えのバスでとっとと去っていった。しかし、見事に何もない。言葉を一瞬失ったが、頼りの地球の歩き方によると、島の中央にツーリスト・インフォメーションがあるではないか!とりあえず、そこに行こうと中央に向かう坂を上ってゆく。しかし、マジで誰もいない。存在する生物は、人間2人(私達)と牛。とにかく、インフォメーションに行くのだ!てくてく15分ほど歩くと、犬を散歩しているおじさんがいた。いかにも地元の人、こんなちっちゃい島やから、インフォメーションくらい知ってるやろう!と聞いてみた。すると、“・・・(パイプを2回ふかした後)I don't know・・・”と呟き、唖然とする私達の横を通り過ぎていった。気を失いそうになりながらも、前方にツーリストらしき女性2人を発見!すると、もう少し上った先に、レストラン兼雑貨屋があるので、そこで聞いた方がいいと言われ、ほのかな希望の光を追うように坂を上る。額から汗も流れてきた。店のおばちゃんは親切で、私達の質問に悩みながら、奥の別の人にも聞いてくれたが、“多分ドゥーラン・フェリーがやってると思うんだけど・・・便は不定期だし、よく分からないわ、ごめんなさい”。ここでゆっくりして行けばいいのに、とアドバイスも受けたが、宿もとってるので予定変更はできないし、確かに素朴だが、何にもなさすぎる!ともかく、島間を運行してるらしき船会社の名前が分かった。しかし、まわりを見渡しても、マジで何もない。だだっぴろい平野に例の石垣、家はポツン・・・ポツン・・・。これ以上、坂を上ってもムダと見て、来た道を戻りながら更に情報収集する事にする。さっきも通った、いかにも!というパブでもおじさんに聞くが、さっきの店のおばさんと同じ返答。下っていると港に近づいてきた。すると、漁師の人たちが作業している。港の事は海の男に聞け!という事で一気に坂を下り、そのうち英語が分かりそうな(ここもゲール語が強い)若い男の子に聞くと、確かにドゥーラン・フェリーズが運行している事は間違いないと言う。電話したら?と言われ、わずかにバッテリーの残った私の携帯を使って彼に電話してもらうも・・・・電波届かず!公衆電話はどこ?と聞くと、ない!けど、少し坂を上ったB&Bのおばさんに使わせてもらったら、と言われ、さっき下ってきたばっかりの道を行く。希望はあるものの、すでに1時間以上経過、精神的にも肉体的にも疲労感を感じる。おばさんにお願いするも、親切そうなくせに思いっきり断られる。じゃあ、どこで電話できるねん!と言うと、更に上の、さっきも行ったパブに公衆電話があると言う。“Va' ○○culo!(訳は省略)”と繰り返し、さっきまであんなに感謝してた、B&Bのおじさんを恨む。更に坂を上る。パブについて、見回すも公衆電話らしきものはない。おじさんに聞くと、店の電話=公衆電話だった・・・。ともあれ、英語がうまく話せないからと、おじさんに代わりに電話してもらう。すると、3時半に1本ある事が判明!・・・たったこれだけを知るのに1時間半経過。しかし、まだ1時。あと2時間半、この何もない島で何せいっちゅうねん!
一安心すると、常にお腹がすいている事に気付く。おじさんに言うと、ホットサンドなら作れるというので、それとビール(ヤケ酒)をオーダー。すると、地元の人が入ってきた気配を後ろに感じるが、私は食べるのに必死のパッチで振り向かなかったが、ダンナが彼をじーっと見ているのに気付く。私もチラっとみると、汚れたTシャツ・ジーンズにアラン模様の入ったニットキャップをかぶった、よく日に焼けたおじさんがググっとビールを飲んでいる。更に、3杯目をオーダー。すごい、絵に描いたようなアイルランドの漁師!パブ内をよく見ると、低いテーブルに丸型の低いイス、そこにグレー地に赤の格子の入ったクッションがのっている。毎晩、ここで地元の漁師が集まってビールを飲む光景が目に浮かぶ。ダンナは、“ここに来ただけでも、価値ある”とやたら感動している。確かに、ここは観光客相手でもなく、本当にそのまんま残った伝統的パブに違いない。さっきまで恨んでた、B&Bのおじさんを“やっぱりアンタはエライ”と再評価。
さて、じっくり休んだところであと1時間半。港から離れたくないので、坂を上ってる時に見た遺跡っぽい所に向けて石垣の続く坂を上る。上まで来ると、石垣で区画された荒廃した土地、青い海の向こうに本島も見える。さすがに風が強い。しかし、触ったらグラグラするこの石垣はビクともしない。ドライブ初日の平野で見た石垣と同じ作り。そうか!いい加減に積んでるのではなく、風を通すようにワザと隙間をあけてるんや!と2人で納得。行ける所まで行こうと先に進むと、ある区画に羊の群れがワラを食べている。一体、誰がここまで持ってくるんや?と思いつつ、カメラを持って近づくと・・・メエェエェ〜!!と怒り炸裂でダッシュしてきた。おののいて1歩下がると、彼らもピタッと止まる。きっと身の危険を感じたんだろう。本島をじっくり見てると、断崖が見える。方向的にも、明日行く予定のモハーの断崖だ。こんなに遠くからでもしっかり見えるんやから、きっとスゴイ迫力!に違いない!
このフェリーを逃すわけにはいかないので、余裕を持って港へ急ぐ。フェリーが近づいてきた!思わず、涙・・・。ここから乗る人は私達のみ。でも、乗る時にも何も言われないし、しばらくしても検札にも来ない。
黙ってたら何もないんちゃう?と思ったが、ダンナがズルはダメ!と、ちゃんと申請してお金を払う。その後、すぐ到着。
イニシュモア島はさすがにデカイ。この島の最大の見所のドン・エンガスの断崖に行きたかったが、ロッサヴィールへの帰りの便まで1時間もないので無理。ま、イニシュマーン島4時間、イニシュモア島1時間、という観光客というのも私達ぐらいだろう。どうせ明日モハーの断崖行くし!と納得させて、イニシュマーンにはなかった、港に近いお土産屋さんを回る。有名な、アランセーターの専門店もある。そこに、いた!日本人団体ツアーご一行様!女性の1人は、山ほどセーターをご購入。いくら有名っていっても・・・あれは買いすぎやろ!
帰りのフェリーは2人とも爆睡。特にダンナは、今晩の宿のあるドゥーランまで100kmの運転が待っている。そして、ロッサヴィールに到着。ほんの8時間前にここから出発する時は、こんな展開を予想もしてなかった。ま、貴重な体験できたから、これで良し!としとく。道中、コネマラ地方でも遭遇したように、羊が道の脇に歩いてたり、ひどい場合は寝てたりして、非常に危険。車にひかれた、血だらけの羊も見てしまった・・・そして!前方の道のど真ん中に牛!当然ながらストップ。クラクション鳴らして襲われても怖いので、ひたすらどいてくれるのを待つ。2・3分後、何もなかったように去る。
今晩は、パブの2階を利用したB&B。期待で胸が膨らむ。ドゥーランに入ったと思ったら、右側の1軒目のパブが、我らの宿泊先・McGann's Pub だった。とりあえず、パブに入ると、“クミコ?”とすぐ聞かれる。おぉ、私も有名なんか!・・・いやいや、きっと唯一のアジア人、というだけやろう。夕食は、もちろんパブで。私はアイリッシュ・シチュー、ダンナはハンバーグ。もはやビールは当たり前。ボリュームも満点でかなりウマイ。そして、もはや定番のフライド・ポテトてんこ盛り。それをつまみながら、今日最後のお楽しみ、生演奏を待つ。ここはダブリンのパブと比べると更に観光客は少なく、地元のおじさんが多い。その音楽、歌声がビールと共に体にジーンとしみ込む。5曲ほど堪能して、惜しみながらも体を休める事にする。下はまだ盛り上がっていて、音楽もよく聞こえる・・・が、疲れはそれにも影響される事なく、私達を深い眠りに落としていった。